恋のかたち20s

恋のかたちも百花繚乱。カフェで花咲く恋、当局から追われる禁断の恋、でも、モダニズムだけが20年代の恋じゃない。

神楽坂
矢田津世子/改造社/昭和11年初版
品切れ
Condition;裏表紙に折れアリ、その他は良

美人作家・矢田津世子の最初の小説集。表題作の「神楽坂」は、雑誌『人脈文庫』に発表され、第3回芥川賞候補になり一躍その名が知られるようになった作品。このとき津世子は、自身も所属していた同人雑誌『桜』にいた坂口安吾との交際を深めていました。しかし、放浪を繰り返し女給と泊まり歩く強烈な個性の安吾とは馬が合うはずもなく、「文学」のために津世子は別離の決心をしたとのこと。結核のために三十六歳の若さでそのひたむきな生涯を閉じ、最近になって再評価の声が高まっている作家です。表題作のほか「父」「蔓草」 「弟」「旅役者の妻より」「秋扇」「桐村家の母」「女心拾遺」「やどかり」を収録。 18.7cm×12.6cm、369頁。→more


流行歌・明治大正史
添田唖蝉坊/春秋社/昭和8年初版
品切れ
Condition;函ナシ、蔵書印、本文・並

「歌は世につれ、世は歌につれ」。流行歌ほど、その時代を情感豊かに表現したものはありません。なかには、政治思想的なものや、戦争物などもありますが、なんといっても一番多くて、時代を彩ってきたのは、「恋」の歌。この本には、380余りの明治・大正期の流行歌の歌詞が網羅され、著者の解説も加えられています。「ハイカラ節」、「カチューシャの唄」、「コロッケの唄」、「地震小唄」、「東京節」、「籠の鳥」などなど。19.4p×13p、388頁。


何が私をかうさせたか 金子ふみ子獄中手記
金子ふみ子/黒色戦線社/1975年第2刷
price;\1,600
Condition;函補正アリ、本文・良

昭和6年、春秋社から出版されたものの復刻版。家庭にめぐまれない、逆境生活の中で育ったふみ子は、大正11年、朝鮮人アナキストの朴烈と出会い、同棲を始めます。しかし、関東大震災直後には、治安警察法違反、爆発物取締罰則違反などの疑いで、収監されてしまう。大正15年、大逆罪で無期懲役となり、その後、獄中で自殺したとされていますが、その獄中での手記が収録されているのが本書。読んでいくと、長い逆境生活にもまれながらも、繊細な心を失うことなく真剣に生きていこうとする、ふみ子の姿が浮き彫りになって、心打たれます。復刻版の増補として、埴谷雄高の「跋文」、ふみ子歌集、「問題の怪写真」を見た刹那の感想、金子ふみ子略歴、朴烈と発行した機関誌の復刻、などが収録されています。19p×13p、598頁。


悔いなき命を
岡田嘉子/広済堂/1973年初版
price;\1,300
Condition;良

大正11、日活映画『髑髏(どくろ)の舞』でデビューし、以後女優として1,2を争う存在にあった岡田嘉子。新劇女優としても活躍しましたが、1938年には演出家・杉本良吉とソ連への亡命を決行。「赤い恋の逃避行」と世間から騒がれます。しかしソ連で二人はスパイ容疑をかけられ、杉本は粛清により殺害されたらしく、岡田は服役ののち市民権を獲得して、ルナチャルスキー演劇大学演出科を卒業、モスクワ放送に勤務しました。1972年には日本に里帰りしています。この本には「女優岡田嘉子について」と題された村山知義の文章が載っていて、それによると1926年に村山知義が、京都の日活撮影所で『日輪』の美術監督として出かけたとき、主演の岡田嘉子と対面したのが、初めての出会いだったと述べられています。19.5cm×13.4cm、256頁+写真。